Cheers to a fabulous 2024

新年 あけまして おめでとうございます

昨年は生産者と作り手、そして、わたしたちサンデールームを支えていただき本当にありがとうございました。昨年は今まで以上にスタッフとお客さんとの境目がなくなっていくように感じることが多い年でした。2020年以降、それまでお客さんだった人が仕事を手伝ってくださったり、畑への援農チームが自ずとできたり、サンデールーム内でやってきたことをコラボという形や加工委託で仲間の会社やお店にお願いするようになったりと、サンデールームを拠点にゆるやかなコミュニティが形成されていくような年でした。

その軸になるのは自然栽培であり、自然栽培から学ぶ自然と調和した生き方です。このコラムでも幾度となく書いていますが、私はこの世界観を知るきっかけとなったのはおそらくナチュラル・ハーモニーのHPに書かれていた自然栽培の説明文からでした。そして、その文章を何度も読んではなんて素晴らしい農業のあり方なのだろう、これをすれば誰も苦しまなくていいのに。農家さんが楽に農業をできるのに。その頃にお世話になっていた農家さんたちに「有機栽培から自然栽培に切り替えませんか?」とお願いしたり、手紙を書いたりしては「星野さんがいうことは理想だよ」と笑顔を返されるだけに終わることがほとんどでした。

理想とは、人が心に描き求め続ける、それ以上望むところのない完全なもの。そうあってほしいと思う最高の状態。反対語に現実というのもがあるそうです。きっと農家さんの笑顔はこの感じだったのでしょう。理性によって考えうる最も完全な状態、また、実現したいと願う最善の目標あるいは状態のことも理想とするならば、私はなんて素敵なことと感動しかありません。

あの時、農家さんから返された笑顔からは嫌みや悪意のようなものは一切感じることはありませんでした。でも、少し寂しい気持ちになったのはよく覚えています。同じ方向を見ているようでも別の世界にいるような感じというのでしょうか。あれから13年、寂しさの理由は少しわかるようになりました。「星野さんの言うことは理想だよ」と当時は同じ方向を見ていると思えた方々とはたとえ同じ方を向いていたとしても、その道は平行のまま交わることはありませんでしたし、大枠の中では有機も自然も同じ方向性であって、自然栽培はその中でもストイックなこだわりの農法くらいの認識が双方にあったからかもしれませんが、双方は歩む道が異なるため、到達地点が明らかにも変わっていったように感じています。でも、それは残念でも悲しいでも、考えの相違で争うこともなくて、当時と同じく、みんなそれぞれ笑顔のままなのです。そしていつしか寂しさもなくなっていきました。

昨年の暮に「郷土料理を味わう料理教室」と題して、石川県ツアーを行いました。旬のノドグロや牡蠣や鱈の白子をたらふくいただき、香箱蟹の捌き方や郷土料理の治部煮をレッスンする2日間、料理をして食卓を囲むことで私たちはまるで家族のような親近感で仲良しになりました。小松市や輪島市に住む現地の方たちとの交流もあり、今回の震災はどこかの他所の出来事ではありませんでした。実際、私が住む群馬県も揺れましたし文字通り、全てはつながっていることを感じる元旦の出来事でした。翌日の飛行機の事故もあり、今多くの方は何ができるだろうと考え、祈りをささげているように思います。SNSではお見舞いのメッセージ、義援金を送る、自分でできることをやるのみ、などの飛び交う発信を眺めつつ私は何もせず5日目にようやく、石川でお世話になった方へメッセージしました。メッセージを交わすうちに涙が流れ、心が動き出しました。心が動いたからメッセージを送ったのか、はたまた逆かはわかりません。元旦から眺めていたSNS、なかでもインスタグラムに流れる言葉はたとえピュアであっても、どこかきれい過ぎて感動はほど遠く引っ掛かりがありません。心地よい音楽のようにただ流れているだけ。それもいいのですが、今回私を動かしたのは、恐怖を煽るかのように作られ最近ではもっぱら嫌われ役のテレビのニュースでした。わざとらしいながらも意図が明確なのでグッとせまるものがあり、善悪を超えて人間の意図ってすごいなと感じる出来事でした。

思えば、私は小学3年生で世の中に戦争というものがあると物語で知ってから、大切な人を亡くす恐怖に苛まれつつ人間はなんて無駄なことをしているんだろうと争がない世界に憧れをもつようになり、周囲を見渡してもそれっぽいものしかない、どうしたってこれでは解決は難しそうだ、ならばその気持ちだけは忘れないようにと自分を奮い立たせるためにあえて戦争映画を見にいくような小学生でした。その気持ちのまま大人になって、たどり着いたのが自然栽培の世界観でした。生まれてから40年かかりましたが、求めていただけに何はさておきすぐに飛び込むことができたのは本当に幸せでした。大地に農薬を、身体に薬を、細菌やウイルスに殺菌剤を使わない。それも無理して使わないのではなく、使う必要のない自然栽培という農法や医療、生き方、考え方。今、サンデールームで扱う農産物や衣服はこの自然栽培的な考えに基づいて選んでいます。衣食住のアイテムたちは、冒頭に書きましたゆるやかなコミュニティを形成するのに欠かせない、暮らしのパートナーとして大きな役割を担っています。彼らは口でものを言わずとも、私たちが道を、判断を間違えないようにサポートしてくれています。

そして何より、数あるお店の中からサンデールームでお買い物をしてくださるみなさんのおかげでコミュニティは広がったり大きくなったり、人ともの、人と人の出会いにより、みなさん一人ひとりのアクション次第で想像以上に展開していくことを願いつつ、2024年、理想を(実現したいと願う最善の目標)を恥ずかしがらず正々堂々と口にして行動をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。