昨年1月、お菓子屋Hyggeの柳田さんを小麦畑と製粉所へ案内する機会があり、せっかくならばと他のお菓子屋さん、パン屋さんにも声をかけました。その日はあいにくの雪予報で遠方からお越しになる方には遠慮してもらったり、産地へ行くこと以外は内容も特に決めないままの決行でしたが、朝家を出て車を走らせていると「小麦塾」という言葉がふとうかびました。
生産者と消費者が出会うことでうまれるものがある、そう思うようになったのは私自身の経験によるものでした。カフェをしていた当時、出勤前に立ち寄る畑で収穫をしたり、農家さんの畑の場合は仕入れをするということにもなりますが、その後調理場に立つと、ふだんとは全く違う感覚で料理をするような感覚になるのです。私の料理はいつだって、献立を決めてから食材を調達するのではなく、食材が先にありそれをみてから私の中の感覚との共振からうまれるやり方で、これを素材を生かすとかその時に自分が食べたいものを作るというのかもしれませんが、自ずと出来上がる感覚を今も変わらず大切にしてることではありますが、その感覚が畑を訪ねたあとはもっと強力になる。大げさに言うと身体が自然に動く、野菜たちに動かされてしまうのに近いかもしれません。畑を訪ねた後の料理はとても楽で、スムーズであることに気づいたのです。
サンデールームカフェ時代の経験が、家庭で料理をするみなさんや料理人さんはじめ加工業者さんにもお伝えすることができるといいなと漠然とした思いを持ち続けていて、その手始めとして、Hyggeさんに小麦畑や製粉の現場、生産者のお話を聞いていただこうと思ったわけです。
従業員を複数抱えている飲食店さん、一人で店を切り盛りするようなオーナーシェフも、もっと小規模で料理教室やお菓子やパンを生業とする方たちでさえ、本当は使いたいけれど価格が合わないと言われる、自然栽培の農産物。価格を基準にするとそうかもしれないけれど、それ以外のリターンがあることをどのように伝えることができるだろう。家庭に置き換えても同じことです。「野菜を自然栽培に変えるのはいいのですが食べ盛りの子供がいるとお米をたくさん消費するから値段を抑えないとなりません」価格がネックと言われると言葉に返せない思いが詰まってしまう。自然栽培の農産物の価値、私には高いとは思えなくて、数字だけで見ればもちろんですが、自分のためだけに食べるものではなく、金額のお得感よりもっと大きなものが得られるかもよと、そんな思いが「小麦塾」には集約されてるかもしれません。
塾といっても、堅苦しいことはなく、自然栽培のことを学んだり、食べたり、語り合ったりできたらいいなという感じです。5月末の小麦の収穫時までには一度は畑にも行けたらいいですね。自然栽培小麦でお菓子を作る人たちのお話を聞く機会もつくります。詳細は後ほどイベントページにUPしますが、次回の小麦塾は4月29,30日の2日間、場所はサロンでの開催です。