9月6日

昨日は友人に連れられ、発酵料理のレストランで食事をしました。ジャンルはイタリアンなのかな。きほん、全てシェフが手作りしているそうで、全てというのはお料理だけでなく、料理につかう野菜やハーブ、パンは酵母から、生パスタ、スプマンテまで。研究所のような店内には得体のしれない液体が入った瓶が並び、きっとこれらも調味料としてお料理につかわれているのだろうな〜という感じ。

流行というよりもはや市民権を得た発酵食品。私は天然菌発酵の調味料や納豆の開発と復活のお話を知ってからは、そして天然菌発酵食品の美味しさに味覚と身体がなじんでからは、巷に出回る発酵食品には不信感さえあるものの、なんか怖くて近づくことをしませんでした。塩麹入りなんやら、酵素ジュースにしても、私の味覚は保守的で食指もあまりのびないこともあり、今回お誘いいただいたレストランも最初はちょっとドキドキしましたが、発酵肉やお魚がおいしいということで「あ、だったら行きます!」となり楽しみにうかがうことにしました。

店に入り、いちばん最初に目についたの「ゆべし」は昨年の11月3日に仕込んだそうで、食べてみる?とシェフはゆべしを包む紙を広げて見せてくれました。和菓子の柚餅子ではなく、珍味のゆべし。あとで調べてみると呼び名は同じでも地方によって違う食べものなことを知りました。飴色を超えて色の濃い物体、ゆず。頭の大きめのてるてる坊主が連なってぶら下がる「ゆべし」がキッチンカウンターでとてもかわいらしくて目についたのですが、紙を開くと私が今まで知っていたものとは違うマットな感じで、他にいらしたお客さんは常連さんらしく「お酒に合うのよね」とそのゆべしをよく知っているようで、私も以前食べたことのある「ゆべし」はなんとなくお酒のような味の記憶がよみがえり、苦手な食べ物だったような。

プラムの酵母のパンに、発酵させたルバーブと鶏レバーペースト、薄くスライスした「ゆべし」をのせた前菜の一品は、それぞれが口に入った瞬間「アメイジング!」と思わず口から言葉が出てきちゃう不思議なおいしさ。同じく前菜の一品のおからがまた絶品で、発酵させた秋刀魚とイカの煮たのが入っていると説明がありましたが、遠くのどこかにその味がするけれどそれは舌に直接的に感じるのではなく、奥行きというのかな。時間が織りなす味なのかな、発酵料理を堪能させていただきました。いつだって、食事をする時には五感を使うのだけど、なんかいつもの使い方と変わるような印象がありました。発酵の時間は植物が育つ時間とは次元が違うのかな、なーんて… ことも今ふと思ったりして。発酵させた鶏肉のハム3種は、口に入れた時に強弱を感じたのがおもしろくて、シェフに言ってみたら、塩漬けのパーセントや、時間や、そのあとの熟成や燻製や、冷蔵庫から出してどのくらいとか食べる時の温度でも異なるのだと説明を聞いていたら、ノートに書いて整理しないとわからないよ〜と頭は混乱したけれど、「あ、これ好き!」とか「これはちょっと私にはつよいな」とか、そんなことを精一杯感じながら、食事をすることなど滅多にないので楽しかった〜。

一皿一皿のお料理を口に運ぶとき、アルコールを受けつけない私の身体の感性によるものか、発酵食に疑問をもつ性分だからか、はたまた人間の本能によるものか、五感をいつも以上におっかなびっくり使う感じ、これが発酵食の人気の理由なのかもしれませんねー。一方で、賞味期限やいつもの決まった味に慣れてしまった現代人が、本能を呼び覚ましたくて発酵食、ナチュラルワインの流行にのせられてるようなきがしないでもないな、そんな風にも感じて帰ってきました。冬になると麹屋さんが忙しくなり、麹が欠品したり届くのを待ったりすることになる。これからお米の収穫が始まり、また倉庫がいっぱいになるでしょうから、私たち生活者にできることは今年は早めに味噌作りをするってどうだろう。柚子がきたら昨年の味噌で「ゆべし」を作ろうかな。