「自然栽培の食材店を営んでいます」と言うと、時々農家さんと間違えられます。それも、けっこうな確率で「畑では何を育てているんですか?」と聞かれたりするので、最近では「食材店です」と少し大きめな声で言うようにしています。そして、「なぜ生産者にならないのですか?」と言うご質問も多いです。自然栽培農産物の流通は生産者と消費者と両方の方向への普及が伴わないと成り立たないことを多くの方はよくご存知だからでしょう。私もそのことは承知のうえ、あえて流通という生産者と消費者をつなぐ仕事を選んでいます。もともと飲食店で店舗があること、街に生まれ育っている、農家の生まれではない、私たちが当初自家菜園で育てた野菜よりはるかに美味しく質の良い農産物を安定して育ててくださる生産者との出会いが今の仕事につながる一番大きな理由だと思っています。サンデールーム始めた当初、コーヒー豆やお米やお味噌を探していた時からずっと私たちは食材を探すところから始まり、行き着いた先が生産者、もっと言えば田畑なんですが、そのお世話係である農家さんリスペクト!私などが農業をするなどとんでもございません!という感じ。
2000年頃から数年間は有機栽培農家さんから、農業や食のこと環境のこと、いろいろ学びました。蒟蒻、味噌、よもぎ餅、3年古漬の沢庵の作り方を教えていただき、自家製の野菜で手作りした美味しさにいつも感動しました。それまで食べていたどこかの店やレストランの「美味しい」とかとは全く別の次元の美味しさ、味のよしあしでない味覚の世界を知ったようで興奮したことよく覚えています。石鹸作りを教えてもらって合成洗剤を使うのをやめたのもその頃。舞踏や音楽や絵画など芸術や文化のお話も聞かせてもらい、ある時質問をされました。「あなたはいろいろ興味があるようだけど、何が好きなの?」「食べることも音楽も絵も本も好きです」と曖昧な返事をして家に帰り「私はいったい何が好きなんだろう」とぼんやり思いながらの数日後に「私は自分で自分を治すことに興味があります」とわざわざ返事をしに行ったこと、よく覚えています。会話として成り立っていたかはさておき、農家さんの発する言葉はいつだって、今でも(時と場合によりますが)心に届く、そう、対話がはじまることがよくあります。
自然栽培を芸術栽培と表現していた時代もあったと聞いたことがありますが、職業のすばらしさとかの意味ではなくて、農業の価値を芸術や創造と私は捉えていて、今も仕入れているのは作品として扱っているところも大きいですね。と言うことで、今日は農家さんですか?とよく質問されるのでそのことにお答えしてみました。